灰溶融炉レポート

灰溶融施設(エコスラグセンター)をめぐるレポート

07年3月3日
境港市議会議員(日本共産党) 定 岡 敏 行 


西部広域行政管理組合(注-1・以下「広域」とします)で建設、運用してきた灰溶融炉(エコスラグセンター)の補修費問題が、広域構成団体のなかでおおきな問題となっています。
この3月末までは瑕疵期間としてメーカーの責任で運転をおこなってきましたが、平成19年4月からは維持補修費が設計段階で示された金額の3倍にもなるとし、新年度分の増額予算が各市町村の新年度予算案に計上されてきています。「今年はまだいい。平成20年度以降がとても納得できる額(金額は後述)じゃない」と、市町村担当者にも不安が広がる事態になっています。
この施設は、下記のような目的をもって建設された施設ですが、私が議員になった最初の、平成14年3月市議会で賛否が問われた問題でした。私は急遽各方面に調査をおこない、「これはまだ、未完の技術であり、いずれ住民に新たな負担を強いるものになる。ごみ減量化こそ基本に」と反対しました。ただ一人の反対だったと思います。しかし建設はおこなわれ、平成16年4月から稼動しました。「3年経てば問題が見えてきているだろう」と、昨年12月から調べはじめたのですが、驚いた状況でした。
この間、広域議会議員でもある岡村英治米子市議といっしょにおこなった西部広域事務局のヒアリングなどで明らかとなった状況を報告します。文中にあげた資料があります。必要な方はお問い合わせください。


【注-1】鳥取県西部広域行政管理組合とは:
特別地方公共団体で、経済的、事務的効率の観点から各市町村が単独で行うより広域的に処理することが適当と思われる事務を共同して行う団体です。
鳥取県西部では、圏域の2市6町1村(米子市、境港市、日吉津村、大山町、南部町、伯耆町、日南町、日野町、江府町)によって構成され、消防、介護認定、ゴミ、不燃物処理などをおこなっています。
必要な経費は、人口規模や業務ごとの利用割合などで構成市町村が分担しています。

1. 灰溶融施設の目的はなんだったか


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エコスラグセンター
伯耆町にある

米子市を除くごみ焼却残渣、西部圏域内のリサイクルセンターなどからでる不燃物残渣、し尿汚泥、および公共下水道汚泥を処理対象物として溶融処理し、最終処分場の延命化、循環型社会の構築に資するとして西部広域行政管理組合によって建設された。施設の概要は次のとおりです。

用地取得費    345、000(千円)
施設建設費  3,454,500(千円)
平成14年7月着工、平成16年4月から稼動開始
施設規模  溶融設備 34t/日(17t/日×2炉)
処理方式  燃料燃焼式表面溶融方式
納入および運転委託企業  (株)ユニチカ

広域は、灰溶融施設整備の必要性を次のように説明してきました。
焼却残渣、不燃残渣、汚泥など埋立対象物を溶融することにより、重量、容積ともに大幅に削減できるから、最終処分場の延命化に資する。
高温加熱処理で、ダイオキシンなどを無害化・安定化できる。
生成される溶融スラグを土建資材として資源化、再利用できるから、循環型社会の構築に資する。
具体的には、日量で27.78t入った処理対象物は、2.18tの溶融不適物、2.91tの溶融飛灰の発生が見込まれるものの、溶融処理により8.96t/日のスラグとなり、溶融によって容積を処理前の18%に、重量も33%に圧縮できる、またその50%を建設資材として再利用するというものでした。(広域『平成14年度廃棄物循環型社会基盤施設整備計画書』より)


2. 三年間の実績がしめす欠陥施設


(1) 18%どころか、やっと半分・・・減容化

補修費の前に、まずは最大の目的だった減容化の問題ですが、実績報告書などによれば、資料により数字の違いがあり、合計のあわない部分もありますが、溶融処理が始まった平成16年度、17年度の実績は、次のとおりです。

----------------  平成16年度     平成17年度
搬入処理物の量   7、826t     7,778t   a
溶融不適物       195t       343t   b
生成溶融スラグ   3,596t     3,470t   c
うち活用スラグ       0t       403t   d
ダスト固化物    1,043t       923t   e

実績報告書によれば広域は、それぞれ45.9%、44.6%の減容化ができ、最終処分場の延命化に役立っているとしていますが、これは、最終処分場の延命化にとって大切な、“容積でどれだけ減ったか”を示す減容率ではなく重量ベースの比較でしかありません。
重量ベースでみても、溶融の前処理で分別、除外され、リサイクルプラザに回される溶融不適物を分母からはずし、溶融によって生成され埋め立てられる飛灰とダスト固化物を分子に加算しなければならないから、各年の溶融処理量(F)と最終処分場への埋立量(G)は、下記のとおりとみるのがより正確です。

----------------- 平成16年度  平成17年度
溶融処理前量 (F)   7,631t  7,435t  a-b
処分場埋立量 (G)  4,546t  3,954t  c-d+e

したがって溶融処理による実際の減容化(G/F)は、それぞれ59.6% 53.2%とするのが正しいとすべきです。
結論として、「実施設計段階で予定した目標は達成されていない」ということです。重量ベースでも計画値だった33%にははるかに及ばず、最終処分場の延命化という目的にいちばん重要な減容化で、どれだけ目標(18%)を達成できたか、その基礎となる計量さえおこなわれていないのです。

【補足-1】容積で18%、重量で33%という数値は平成27年度目標値だという意見があるかもしれませんが、取り組み次第によって変えることができるごみ減量化目標などと違って、溶融による減容化は、建設したプラントの性能によって決定づけられるものです。多少の改修できても、そのうち良くなるというものではないでしょう。
【補足-2】広域の『各施設搬入出量』に、下記のような最終処分場への埋立量(㎥)比較があります。これをもとに「減容化」の成果をいう意見がありますが、これは境港市が平成16年10月からおこなったゴミ袋の有料化などの結果も含むもので、これをすべて溶融の結果とみることはできません。そしてこれによっても、平成15年度埋立量に比べて平成16年度が46.5%、平成17年度は42.2%でしかないのです。

---------   平成15年度  平成16年度  平成17年度
埋立量(㎥)  18,038   8,391   7,613 

(2) 札束を路盤材に?・・・溶融スラグの資源化

溶融スラグの資源化も調べてみましたが、平成16年度の実績のゼロは、初年度ということで割り引くとしても、平成17年度もわずか403t、できたスラグの12%に過ぎません。うち販売したのは325tで、その収入額(150円/t)は5万円に満たない状況です。
広域は「JIS規格もとった。県が市町村に指針もだした。これから建設資材としての活用を図る」というが、製造コストはトン当たり24,000円(広域概算)、それを150円で売るのです。「売り上げが目的ではない、リサイクル、有効活用が目的」とも言いますが、札束を埋立てる、「路盤材だ」と札束を敷き詰めるに等しいのではないでしょうか。ここまでの税金投入に果たして市民理解は得られるでしょうか。

(3) 計画時の3倍もの補修費を請求

運転は施設のメーカーでもあるユニチカに委託されています。契約により平成16年の供用開始から3年間を瑕疵期間として、発生するトラブルは納入企業、ユニチカの責任で処理してきました。
その瑕疵期間が終わることからユニチカに今後の維持補修費について見積もりを求めたところ、当初計画の金額をはるかに上回る金額が提示されました。実施設計計画値との比較でその見積り額をみれば次のとおりです。

---------- 実施設計計画値  見積額(18.6.26段階)(千円)
平成19年   219,240   340,280  +1億円
平成20年   128,940   369,466  +2億4千万円
平成21年   125,790   352,202  +2億3千万円

高額になる理由についてユニチカは、「不燃残渣の割合が多いこと、なかでもプラスチック類が多いため耐火材の浸食が早まり(劣化の状況を示す写真あり)、高価な耐火材を使うことになった」と説明しているようです。
平成19年度分について広域は、交渉を経て248,850(千円)で合意しましたが、20年度以降についてはまだ納得せず、今後の交渉の課題としています。
平成19年度分の維持管理費増は、構成自治体の分担金の増額となって、新年度予算案に計上されています。広域会議資料によれば、今年の増加要因には、施設建設費の起債分が上がることも含まれていますが、境港市で平成18年度の7,054万円が、13,530万円になり、米子市は2億円だったのが約4億円となる見込みです。
とくに平成20年度以降の補修費が大きく、設計時を2億3~4千万円上回る金額で、これは今後10年間に、およそ20数億円もの予定外の負担を迫るものです。市町村は負担に耐えられるでしょうか。


3. 道理ある解決へ、私の見解


冒頭にのべたように日本共産党は、計画段階からこの事業について、最終処分場の延命化、ダイオキシン対策というその目的の緊急性と効果に疑問を呈し、ゴミの減量化という根本的計画がないことを批判、溶融炉技術について、「その安全性と効果に問題があり、建設費や維持管理費が非常に高くなる」と指摘し、灰溶融施設建設計画の中止(平成14年2月26日、共産党西部地区委員会の申し入れ)を求めてきました。事態の進展はこの指摘の正確さを示すものです。
事態の道理ある解決のためには、次のような見地にたつことが重要だと考えます。

(1) 製造者責任の追及を

検討したように、施設建設の最大の目的、減容化という計画時の目標は達成されていません。
維持補修費についても、「運用してみたら不燃残渣、なかでもプラスチック類が多いため耐火材が持たない。煙道の飛灰の固化が激しい」などという理由は成り立つものではありません。プラスチック類の溶融は設計時から仕様書に織り込み済みのことであり、多少の幅をもたせることは設計のイロハです。許容できる割合さえ超えたというなら、それは、ゴミ質ごとのカロリー量のちがいも考慮し投入ゴミを管理するという、これも焼却の基本をわきまえず業務を受託してきたユニチカの責任です。
この基本的立場を明確にして、厳しい態度で対応すべきです。建設工事請負契約書第44条は、「瑕疵の期間または損害賠償の請求の期間を3年間」と定め、「ただし、その瑕疵が(メーカーの)故意または重大な過失により生じた場合は10年まで延長できる」としています。
当面3月末まで、メーカーのおこなう補修の結果を見つつ、なお必要な場合は性能が実現できるまで瑕疵期間の延長を求めて当然です。
もしメーカーの責任を法的に問えないということになれば、広域の責任がとわれることになります。建設当時、私は「体積が2分に1か3分の1に減ればよい程度」だと指摘(平成14年3月議会)しましたが、当局は「体積が5分の一になる。夢のような施設だ」と宣伝し、莫大な建設費の投入を合理化したものでした。38億円もの税金をつぎ込みながら、結果は「しょうがない」でことが済んでよいものでしょうか。

(2) 灰溶融炉廃止も視野にいれて検討を

3月末の補修状況、あるいはその後、瑕疵期間の延長があってもなお解決しない場合は、施設の廃止も選択肢にいれて検討すべきです。
廃止ということになれば、①補助金の返還と起債の繰上げ償還、②減容の代替手段あるいは最終処分場の延命化はどうするかという課題が発生します。
6億8,400万円の 国庫補助金の返還、28億2,500万円の起債の繰上げ償還(まだ返済は始まったばかり)ということになりますが、現在の溶融処理費、3億2,778万円(広域「平成17年度決算書」)ふくめ、仮に年6億円と低く見積もっても6年でペイできます。多額の傷を負うことになるとしても、それ以降の負担軽減を考えれば、より賢明な選択です。

(3) ごみ減量化の大道に立ち返った議論を

減容の代替手段あるいは最終処分場の延命化という問題については、ごみ減量化という基本に立ち返って、市民とともに本格的な推進を図ることです。
もともと地球温暖化という大きな視点からも、大量生産、大量消費、そして焼却・埋め立てのごみ行政は、抜本的な見直しを求められています(焼却場が発生するCO2は、総排出量の6%にも達するという研究もある)。また財政難にあえぐ自治体にとって、ゴミ行政の合理的改革は行財政改革の主要なテーマです。
しかし、国が製造者責任を問う法制度を回避し続けており、ごみ問題は、市民の日々の暮らしにかかわり、市民のねばり強く意識改革を問うという一定の困難をともなうことから、多くの場合、自治体は、かけ声はかけるが具体的な粘り強い取り組みに欠け、安易な有料化でこと済ますのが現状です。
背水の構え、市民と格闘する構えももって、ごみ減量化の大道に立ち返った取り組みをおこなえば大きな変化をつくれることは、名古屋市など先進自治体の経験が教えています。
生ゴミの分別・資源化のとりくみに、何%の市民を巻き込めば、どれぐらいの減量化ができるのか、あるいはそれぞれの自治体で20%の生ゴミを減量化できれば、最終処分場はどうなるか?
自治会や子ども会などによる古紙、アルミ缶などの集団回収の推進で収集コストの節約や焼却の減量化は図れないか・・・。
下水道汚泥およびし尿のセメント固化や米子がはじめたコンポスト化など、資源化推進と肥料の広域的活用、あるいは水産飼料化の可能性は?など、構成団体それぞれの到達を踏まえながら、本格的な議論を広域としてもおこなうことではないでしょうか。
なお必要な溶融があるとすれば、まだ余力のある米子クリーンセンター溶融炉の広域的活用を検討したいものです。