マニュアル批判の補足

6月議会一般質問で私は、今後の汚水処理の方針について、市域の約半分が終り新たな整備計画策定が求められるという節目にあたって、「合併処理浄化槽など新たな整備手法も含めた経済的効率性の検証をおこなう」よう求め、市当局も同意しました。
そのうえにたって私は、「検討は、将来の人口予測、環境への負荷、財政効率など多面的な側面から科学的な根拠を持っておこなわれなければならない」として、自治体の検証業務でよく使われる『日本下水道協会の効率的な汚水処理のための都道府県構想策定マニュアル(案)』について言及し、マニュアルに記載された「検証の基礎となる費用関数や耐用年数は、実態にかけ離れたもの」だと指摘、「このマニュアルだけではなく、あらゆる整備手法の資料、25年近くの境港の実績も大事にした合理的な検討」を求めました。
建設部長もこの指摘を受けとめ、検証に当たることを約束しましたが、このとき、マニュアルの費用関数や耐用年数について、時間がないため結論しか述べることができませんでした。
以下に、その根拠となった計算過程などを紹介します。ご意見、ご指摘があればお寄せください。なおここでは、ことがらをわかりやすくするため、検証の方式および合併処理浄化槽以外の整備手法との比較は問題としません。

6月議会での日本下水道協会マニュアル(案)批判の補足

07年6月18日
市議会議員 定岡敏行

1、処理場建設費の費用関数について

マニュアル18ページの《処理場・建設費》のところの赤い線の計算式が、境港市規模のケースに相当するのですが、これによって境港市の、外江、渡すべてを集合処理したとすれば、
外江、渡地区3,300人分を含めた一日最大処理汚水量Qdは、これまでの当市の実績から28,900㎥/日ですので、
C=93,218 ×(28,900/1,000)(乗数)0.7229 = 10,606,762(千円)となり、これを処理場本体の耐用年数33年で割って、合併処理浄化槽による整備費用と比較することとなります。
これを㎥あたりに換算してみると、10,606,762(千円)/28,900㎥=367(千円)、残る外江、渡地区もふくめて全域を集合処理で整備すれば、処理場にかかる建設費は、約106億円、㎥あたり36万7千円でできるという計算です。
実際はどうでしょうか。全国の自治体からの報告にもとづいて総務省が毎年公表している『地方公営企業年鑑平成17年度版』によれば、境港市(ページno.4)のこれまでの処理場建設費(DQ:45)の合計は69億812万円。それで可能な処理汚水量=晴天時処理能力(DQ:62)が7,800㎥/日ですから、この実績で計算すれば、㎥あたりの処理場建設費は88万5千円です。
実際にはそれぐらいかかっているのに、36万7千円程度として比較する・・これでは正しい比較ができないことはあきらかです。

2、管渠の耐用年数について

私は、財政効率を比較するうえで重要なファクターになる管渠の耐用年数についても触れました。
マニュアル19ページは、合併処理浄化槽躯体の耐用年数を30年とする一方、管渠について「40年以上経過した施設を使用している市町村のうち、経過年数ごとの更新管渠延長が把握された18市町村のデータから、その平均経過年数をもとめ72年とした」としています。
72年という数字が科学的な根拠をもつためには、およそ100年の管渠の歴史がまずはあって、54年で壊れたものもあったが90年持ったものもあったという事実が必要でしょう。そしてそれが同程度だったら平均耐用年数が72年とすることができるでしょう。
先の18ページに、管渠の実績が「50年~120年」と書いてありますが、このマニュアルが平成13年度版ですから、その120年前といえば明治14年です。日本のどこにそんな下水道があったでしょうか。
日本ではじめての下水道が作られたのは、明治17年(1884),東京神田川をレンガ積み暗渠で整備したのがはじまりです。その後、いくつかの都市で下水道が作られたものの,全国に普及することはなく、本格的に整備されるようになったのは、第二次世界大戦後、産業が急速に発展して、都市への人口の集中が進んでからのことでした。
ましていま問題となる管渠は、ヒューム管や塩化ビニール管です。この耐用年数を考えるのに、神田下水でしょうか。
下水道管渠へのこれらの導入時期は、にわかにはわかりませんでしたが、日本における塩ビの製造の歴史自体が1941年から。まだようやく66年です。

3、その他の関数についても合理的な選択を

本会議では、この費用関数については処理場、耐用年数については管渠の二つしか触れませんでしたが、正しい比較検討のためには、このほか管渠の建設費、また処理場や管渠の維持管理費、そして対する合併処理浄化槽の建設費、耐用年数などについての正しい設定が必要です。必要な機会があればまた触れることとしますが、この2点だけをとってみても、下水道協会の『マニュアル』にこだわらない実態に即した合理的な検討が必要なことがご理解いただけるのではないでしょうか。