人口減少下での地域づくり

2014.5.12
境港市議会議長 米村一三 さま

               日本共産党境港市議団  定岡敏行

政務調査報告書

4月24日~25日、『第10回地方議会議員研修会』に参加してきました。
今回の研修会のテーマは、「市民と地域が豊かになる地域再生のコツ」として、グローバル化し成熟化し、人口減少下の社会のなかで、地域の経済振興をどう考えるか、自治体の地域産業政策をどう考えるかと<いうものでした。

日程と受けた研修内容は下記のとおりです。
【会場】
日本教育会館(東京千代田区)
【日程】
4月24日(木)13時~17時
**記念講演  『自治体の地域産業政策』
****植田浩史(慶応義塾大学教授
**特別講演  『官民連携による復興への新たなとりくみ』
****瀧澤  肇(岩手県宮古市総務企画部復興推進課長)
4月25日(金)午前9時~15時
**集中講義  『人口減少下の地域まちづくりを問う』
****鈴木  浩(福島大学名誉教授)
【主催】
NPO法人建設政策研究所

(1)
  植田浩史氏の記念講演『自治体の地域産業政策』は、世界経済のけん引力が大量生産・大量消費型の日米欧先進国から中国、インド、ブラジルといった新興国へと移り、世界の中での日本のGDPシェアは低下し、技術革新のスピードで日本製品のシェア低下のスピードも加速し、「技術力」が競争力に結びつかなくなっているさまを詳述、もはや「20世紀的な発想で地域経済や地域産業の方向性を考えることはできない。リーディング産業や企業に依存してきた地域経済、地域産業政策からの脱却を」と、次のような転換をよびかけ
  地域産業政策を中央政府中心から地方自治体中心へ
  グローバルな視野にたってローカルな視点を
  100×1の発想から1×100の発想へ。域外流入の誘致から域内循環の創造へ。
  自治体の施策と地域内企業の意欲との連携を
 その先進的事例として東京墨田区、大阪府八尾市、北海道帯広市のとりくみを紹介しました。

(2)
  特別講演で宮古市の瀧澤肇氏は、東日本大震災の時の宮古市を襲った津波の様子と被災状況をDVDで紹介したうえで、復興にあたって、応急仮設住宅建設、被災家屋等の応急修理制度やみなし仮設住宅借上げ制度など、住まいと生業の迅速な復旧を最優先としたこと、コミュニティの維持に配慮したこと、行政の独善を排し市民意向の把握に留意したことなどと報告し、示唆的なものでした。
  宮古市は、原状復帰だけではなく、市民が希望の持てる街へ発展してこそ、ほんとうの「復興」だとし、「新たな官民連携モデル」とする宮古市ブルーチャレンジプロジェクト協議会を設立、スマートコミュニティ事業を進めています。
  この事業は、ITを活用した地域のエネルギーマネジメントシステムの構築やバイオ発電や蓄電設備、カーシェアリングとEVステーション、熱源としての太陽光を活かした植物工場の運営など多岐にわたっています。
  事業は、「行政と事業者が対等の立場で役割を分担」としていますが、参加企業はトヨタ、三菱などほとんどが県外大企業で、「民間事業」として運営されるとのこと。地元企業の参加がどういう状況なのか詳しくはわかりませんが、これが、「民間活力の活用」の名の下、大事な地域資源を大企業の儲け口として提供してきたこれまでの『官民連携』とどう違い、『新たな官民連携モデル』足りうるのか、批判的検討が必要ではないかと思う講演でした。
 
(3)
  二日目の鈴木浩氏の集中講義『人口減少下の地域まちづくりを問う』は、
  第1講『官民連携のまちづくりに求められるもの』
  第2講『地域再生につながるコンパクトシティを考える』
  第3講『人口減少下のまちづくりの課題』
の3つに分けておこなわれましたが、とても膨大なもので紹介しきれません。感じたことを書き留めて報告とします。

  第1講で鈴木氏は「官民連携」の過去、現在、未来を語りながら
  ▼ 東日本大震災から見えてきたのは、「復興の主体は市町村」だということだ。その計画の立案段階からゼネコンが入り受注していく・・・これでほんとうに地方主体の復興ができるのか、住民自治の論理は貫けるのか。
  ▼ 公共の事業である以上、官民連携の基本的な前提は、「公共の論理を確立することだ」とし、自治体が”公共”を担保できるのは、選挙で選ばれた議会が併存されているからで、”新しい公共”と言われるNPOや企業にそれがあるか、民間企業にあるか。徹底した情報公開や第3者機関による進行管理や事業評価など、公共性を担保するしくみが必要となっている--- と指摘をしました。
  境港市でも、環日本海定期貨客船や大型クルーズ船の寄港増加など、圏域内外からの交流人口の増加を活かし賑わい創出を図るとし、竹内工業団地を中心とする新たな開発計画=『先導的官民連携支援事業』がとりくまれていますが、指摘された視点からみてどうなのか、検討してみたいと思っています。

  第3講『人口減少下のまちづくりの課題』は、かねてからの私の関心でした。
  直接的な契機は『公共下水道事業』です。度々の私の提起を受けて、事業の検証をおこなった境港市は、2008年に改めて、「市の汚水処理は公共下水道で」との方針を決定しましたが、国立社会保障・人口問題研究所の最新の公表資料によれば、市の人口はいまから約20年後の2035年には28,682人と、当時の人口からざっと20%も減少する見込みです。しかも、最初に建設した施設は更新時期を迎えます。果たして、この人口で何百億円とつぎ込んできた巨大な公共下水道施設は維持できるだろうか、という懸念が抑えられません。
  もっと視野を広げれば、国内経済に出口の見えない低迷が続くのは、政治が破たん済みのトリクルダウン理論に縛られ、市場原理と金融経済を極端に推進、大企業優遇の限りを尽くし、国民生活と地方に犠牲を集中しているからです。 国民所得の格差は極端なまでに広がり、地方都市も衰退の一途をたどっています。高齢社会化と人口減少も進行し、コミュニティの維持すら困難になり、また医療、福祉、労働、そして住まいなど生活基盤をささえる様々な分野で深刻な社会的不安がつのっています。
  にもかかわらず、多くの自治体は、困難の真因と深刻な事態を直視することなく、国が言うまま、時代遅れの外需頼み、企業誘致、開発優先の、相も変らぬ”いけいけどんどん”のように、私には見えてなりません。
  この圏域でも県や多くの市町村は、大震災に便乗して”国土強靭化だ”、あるいは物流機能の強化へ”高速道路網の整備だ”と巨大公共事業を喧伝し、その一方で、「経済活動に欠かせない」と、いちばんの危険=「原発を廃炉にせよ」とは言いません。
  自治体のいちばんの役割は、そこに暮らす住民の日々の暮らしを守り、向上させることです。産業活動も港湾や公共下水道も本来、社会生活に欠かせぬ、暮らしの「質」にかかわる重要課題で、私もその意義を重視するものですが、「目的」と「手段」を取り違えバランスを欠けば、自治体と住民に重くのしかかって、暮らしの「質」を落とす重しになりかねません。
  果たして減少する人口のもと、地域のインフラ整備はどうあるべきか、なによりも守るべき暮らしの「質」はなんなのか、押し寄せる様々な困難にどう立ち向かい、医療は、介護は、教育はなにをどこまで・・・、どこで新たな産業を創出し、雇用を確保するか・・・30年後、50年後を見据えた調査と議論、住民合意を経た長期的計画がいまほど必要なときはないと思い続けていますが、なかなかまとまった発言や提言をできないでいます。
  引き続き勉強したいと、改めて決心する研修会でした。  

  第2講『地域再生につながるコンパクトシティを考える』については、省略させていただきます。