最近、日本という国のありようを問う二つの本を読んだ。藤原正彦著『国家の品格』と安倍晋三著『美しい国へ』である。
どちらも新書版だが、その帯の似ていること。『国家の品格』は“すべての日本人に誇りと自信を与える画期的日本論”と謳い、『美しい国へ』は“自信と誇りのもてる日本へ”と謳う。それほど、自信と誇りを喪失した国の証か。

『国家の品格』は、ある市職員が「定岡さん。読んでみたら」と貸してくださった。著者・藤原はお茶の水女子大学理学部教授、数学者。作家、新田次郎と藤原ていの次男。彼は言う。「いま日本人は、正気を失い、改革イコール改善と勘違いし、美風をかなぐり捨て、闇雲に改革へ走った。市場原理をはじめ、とどまるところを知らぬアメリカ化は、社会、文化、国民性まで深い影響を与え、金銭至上主義にとりつかれた日本人は・・・法律違反まで卑怯とも下品とも思わなくなったのです」。
品格を失った国家の再生へ、彼は、「論理」の限界を説き、情緒の文明、武士道精神の復権を説く。いかにも復古調のように見えるが、そこはご一読あれ。彼自身言うように、極論や納得しがたい断定もあるが、学ぶところが多い。教育論も刺激的。
変えて『美しい日本へ』。なんというか、読み応えがない。戦犯政治家の家系に生まれ、普通の国民の暮らしも知らぬ《政治家》とは、こんなものかと思うだけ。いや、そういっちゃ間違う。暮らしも戦争も知らぬ“こんなものか”だけに、発想される政治的メッセージは一方で幼稚で、一方で極めて危険。ここでも日本古来の伝統、家族の価値とか、強い日本などという言葉が飛び交う。
彼は、天皇制こそ美しい日本の国柄をあらわす根幹であるとし、その国のために死ぬことを義務づけられた特攻隊の若者たちの尊い死に、戦後我々はどう向き合ったきたかと問い、鷲尾克己少尉の最後の詩を称揚する。《はかなくも死せりと人の言わば言え わが真心の一筋の道》。
戦後60年、国民がその英知であがなってきた民主主義、社会進歩の成果は、彼のなかに何一つない。文字どおりの「戦前」だ。その彼が総理になった。







「国家の品格」の巻末に収めてあった藤原正彦氏の写真を見て、著作「孤高の人」など私がかつて愛読した新田次郎にそっくりだ、と思った。そして、安倍さんは岸さんにやはり似ていますね。
Posted: yonago2 | 2006年10月01日 07:37