キューバ医療について書いてきた。こんどは「ヘンリー・リーブ国際救助隊」について。この結成のきっかけとなったのは、05年8月29日、アメリカ南部を襲ったハリケーン・カトリーナだった。
まだご記憶にあると思うが、ジャズの都、ニューオリンズでは堤防が決壊し、市域の8割が水没。なかでもアフリカ系アメリカ人が多く住むロウワー・ナインス・ワード、湖に面した高級住宅街レイクビューの各地区が特に大きな被害を被った。緊急避難命令が出されたが、移動手段を持たない貧困層は取り残され、1,700人余の人々が亡くなった。重軽傷者は数々、広がる感染の恐れ、と緊急医療が待ったなしだった。
当然アメリカ議会も総額518億ドルの補正予算を成立させたが、ブッシュは10月、「民間部門が沿岸復興のエンジンだ。私は予算のカットを申し入れる」と語り、また「連邦政府に地域再建の責任はない」とも言い放った。

カストロ議長
しかし、被災地と目と鼻の先にあるキューバの対応は違った。「アメリカはキューバを経済封鎖している国だが、それは人道支援とは関係ない」とし、9月1日には、犠牲者を救助する医師団の派遣を発表した。1,586人の医師団が編成され、医薬品を詰め込んでハバナへ集結した。10年の医療経験をつんだベテランぞろいで平均年齢32歳。うち857人が女性だった。
ところがアメリカ政府は、このキューバの申し出をはねつけた。カストロは「心が痛む。水に囲まれ、死の間際に置かれ、絶望している人民の何人かは救えたかもしれないのに」と嘆く。そしてこの医師団を解散せず、新たな補充もおこない3,000人のボランティア医師団を組織し、「ヘンリー・リーブ国際救助隊」として発足させたのだった。10月には、ハリケーンに襲われたグアテマラへ、先日書いたパキスタンへと飛び立った。
災害救援だけではない。05年現在、アフリカや中南米など世界68カ国で24,950人の医師が医療保健活動や人材育成に取り組んでいるという。まだこの先のすごい活動があるのだが、書いてしまえば著者に悪い。ぜひ買ってご一読願いたい。
アメリカとキューバ、この二つの国のあいだに、人命というか人類への責務というか、国家運営の基本理念に、桁外れとでもいえる大きな違いを感じませんか。
ちなみに「ヘンリー・リーブ」とは、100年前、スペインからの独立戦争のときキューバにわたって闘ったアメリカ青年の名前とのこと。27歳の戦死だったという。
この記事は、先日紹介の本『世界がキューバ医療を手本にするわけ』をもとに、いくつかのサイトを参考としてまとめました。







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