18日の空港・基地調査特別委員会で、この方は自衛隊出身なのですが、ある議員が、「中国では南京虐殺の記念館をつくって若い世代を教育している。自分はなかったことだと思うが・・」などと発言、“ここにも歴史の偽造者が”と嘆かわしく思ったものです。
『南京虐殺』については過去にも触れたことがあるので、重ねては書きませんが、ちょうどいま読んでいる・・・・・・・
加賀乙彦の長編小説『湿原』で、次のような一文に出会ったので、少々長いのですが再録して置きます。
加賀乙彦は医学博士にしてカソリック教徒。だからどうだとは言いませんし、これは『小説』のなかの記述。だからどうだとも言いませんが、お読みください。
南京虐殺をなかったことだという人々は、「これもフレームアップだ」というのでしょうけれど。
四月のある日、訓練を終えて宿舎にもどる途中、納屋を改造した衛兵所の前を通ると、鉄格子のはまった営倉に老いたシナ人がいれられていた。白い長衣を着て上品な面持で、何か身分のある人と見えた。衛兵勤務の上等兵にそっと尋ねると、隣村の村長で落介石軍に日本軍の動静を通謀した疑で逮捕したのだと答えた。
翌朝、人事係の曹長が初年兵四十人を中隊前の広場に集めた。やがて当番兵が後手に縛った老人を連れてきた。泥まみれの衣と赤黒く腫れた頗はよく見るときのうの村長だった。鼻はつぶれ、唇は切れ、拷問のあとは明らかだ。
曹長はにっこりとして誇らしげに言った。
「これはおまえたちのために特に用意した標的である。ただいまより生身の人間を体験させる」
村長は、二本の杭の間に、まるで短剣術訓練用の空俵のようにくくりつけられた。腫れあがった瞼の下から鋭い視線が俺たちを射っていた。
「お前たち四十人の全員が体験するのであるからノド首付近を刺して早く殺してはならぬ。まず雪森二等兵から、はじめ」
おれは剣を抜いて走った。上官の命令スイッチによって体が機械のように動き出すほど、兵隊になり切っていた。
突くのは、あくまで“仮標”であって本当の敵兵ではない。それが空俵であろうと人間だろうと、“仮標”なのだ。おれは老人の顔を見ず、何も考えずに右胸に剣を突き刺した。衣服を貫き、固いもの、骨に切先がひっかかり、それから柔かいもの、肉にと侵入していったとき、ギヤーと悲鳴があがった。老人が目を見開いてこちらを睨んでいる。そのとき、良心の呵責でも覚えればまだ人間らしかったが、おれは平気だった。むしろ命令をいの一番に立派に果した自分に誇りをさえ覚えていた。剣をさっと恰好よく抜くと血が衣類に染みた。まわれ右して自分のいた列中にもどる。すると次の兵が駆け出し、老人の腹に剣を突き立て、老人はガーと叫んだ。
悲鳴を聞きつけたのか中隊宿舎から兵たちが出てきて見物している。面白い見せ物を見物するように近付いてきて、地べたに坐りこむ者がいる。中隊で徴用している苦力が顔を出すと、下士官が怒鳴った。「シナ人に見せるな。そいつらを追いだせ」
突かれるたびに老人の声は段々に弱くなり、十人目からは黙ってしまった。縛られていた右手が抜けて、血まみれの胸をまさぐつている。兵の剣はその手の甲を割って刺さった。
「つぎ」「つぎ」と曹長は号令をかける。二十人目ぐらいの兵が、何を思ったか禁止されている首を突いた。すると老人の頭が不意にがっくり落ちた。
「ばかもん。なぜ首を突く。おまえには戦友のためを思う、暖かい心がないのか」
「悪くありました」
兵は、きっかり十五度、体の上部を傾けて礼をした。曹長は舌打ちした。老人はこときれたと見え、もう動かない。その兵のあとの者は生体を体験できなくなったわけだ。しかし、「つぎ」「つぎ」と行為は継続された。
全員が突き終えると、老人の死体を埋めた。あらかじめ当番兵が掘っておいた穴に老人を投げこみ、土をかけ、足で踏みかためる。固く締めた土に草を生やし、跡形もないように努めた。
翌朝、人事係の曹長が初年兵四十人を中隊前の広場に集めた。やがて当番兵が後手に縛った老人を連れてきた。泥まみれの衣と赤黒く腫れた頗はよく見るときのうの村長だった。鼻はつぶれ、唇は切れ、拷問のあとは明らかだ。
曹長はにっこりとして誇らしげに言った。
「これはおまえたちのために特に用意した標的である。ただいまより生身の人間を体験させる」
村長は、二本の杭の間に、まるで短剣術訓練用の空俵のようにくくりつけられた。腫れあがった瞼の下から鋭い視線が俺たちを射っていた。
「お前たち四十人の全員が体験するのであるからノド首付近を刺して早く殺してはならぬ。まず雪森二等兵から、はじめ」
おれは剣を抜いて走った。上官の命令スイッチによって体が機械のように動き出すほど、兵隊になり切っていた。
突くのは、あくまで“仮標”であって本当の敵兵ではない。それが空俵であろうと人間だろうと、“仮標”なのだ。おれは老人の顔を見ず、何も考えずに右胸に剣を突き刺した。衣服を貫き、固いもの、骨に切先がひっかかり、それから柔かいもの、肉にと侵入していったとき、ギヤーと悲鳴があがった。老人が目を見開いてこちらを睨んでいる。そのとき、良心の呵責でも覚えればまだ人間らしかったが、おれは平気だった。むしろ命令をいの一番に立派に果した自分に誇りをさえ覚えていた。剣をさっと恰好よく抜くと血が衣類に染みた。まわれ右して自分のいた列中にもどる。すると次の兵が駆け出し、老人の腹に剣を突き立て、老人はガーと叫んだ。
悲鳴を聞きつけたのか中隊宿舎から兵たちが出てきて見物している。面白い見せ物を見物するように近付いてきて、地べたに坐りこむ者がいる。中隊で徴用している苦力が顔を出すと、下士官が怒鳴った。「シナ人に見せるな。そいつらを追いだせ」
突かれるたびに老人の声は段々に弱くなり、十人目からは黙ってしまった。縛られていた右手が抜けて、血まみれの胸をまさぐつている。兵の剣はその手の甲を割って刺さった。
「つぎ」「つぎ」と曹長は号令をかける。二十人目ぐらいの兵が、何を思ったか禁止されている首を突いた。すると老人の頭が不意にがっくり落ちた。
「ばかもん。なぜ首を突く。おまえには戦友のためを思う、暖かい心がないのか」
「悪くありました」
兵は、きっかり十五度、体の上部を傾けて礼をした。曹長は舌打ちした。老人はこときれたと見え、もう動かない。その兵のあとの者は生体を体験できなくなったわけだ。しかし、「つぎ」「つぎ」と行為は継続された。
全員が突き終えると、老人の死体を埋めた。あらかじめ当番兵が掘っておいた穴に老人を投げこみ、土をかけ、足で踏みかためる。固く締めた土に草を生やし、跡形もないように努めた。
作中、現地人の陰惨な殺戮は、まだまだ続くのですが・・・・・・・。







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