TPPへの幻想

原発対応で必死の間に、TPPの嵐です。
野田政権も参加へ必死ですが、「TPPは農業だけの問題じゃないぞ」と、気がついた国民各層の反対運動もかってない広がり。希望をもってがんばりたい。
先日、ある議員が、「アジアの成長を取り込まないでやっていけるか。農業で日本国民みんな食わせることができるか」と攻めたててきた。

“農漁業には大変だが、製造業界にはプラス。雇用も期待できる”という幻想が、大企業だけではない、田舎でまで巷に多いが、ほんとうか。

(1)中国も韓国も参加しない

「アジアの成長」の中心的存在となっている中国、韓国やインドはTPPに参加しない。フィリッピン、インドネシアもだ。アジア市場で参加するのはベトナム、シンガポール、マレイシアのみ。このどこに「アジアの成長の波」を取り込む余地があるのか?
ゼロとは言うまい。海外進出する中小企業出現の可能性も一部にはあるだろう。しかし冷静に考えて、それはごく一部で、多くは低くなる投資障壁で加速する大企業の生産拠点の海外移転や工場閉鎖がもたらす地域の困難にさらされることになるだろう。さらに地域の消費者である農漁業者や雇用労働者は、TPPで衰退や失業の波に襲われる。それは地域経済にとって消費購買力、国内需要を押し下げ景気悪化の要因でしかない。
「TPPは政府補助金など非関税障壁も完全撤廃だ。日本がTPPで手足縛られている間に、中国が官民一体で産業を育て上げて、アジアを席巻する」という指摘に説得力はないか。

(2)大企業の儲けはしたたり落ちたか

さらに譲って、一部産業、一部企業の隆盛が実現したとしよう。その場合でも大事なことは、それが自国民の雇用拡大や所得の増大となって、国民に還元されることだが、果たして。
“トリクル・ダウン”論も、いま風にいえば、「参加しなければ日本は世界の孤児になる。政府には国益をよく考えて欲しい」(米倉弘昌経団連会長)・・・という脅しです。

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小泉改革以来の大企業・財界は、国際競争力の名の下、輸出支援、規制緩和、労働者賃金の切捨てで莫大な利益を上げ続け、空前の内部留保を溜め続けてきた。
それと裏腹に雇用者報酬は減り続け、結果としてGDPも伸び悩む・・・その結果がいまの日本。財界やTPP推進派が脅しに言う“危機”です。
儲けたカネはさらなる利益を求めて金融市場に投下された。その結果が、“1%と99%“というわけだ。
またぞろ、幻想にだまされているわけにはいかない。

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(3)対日輸出増大こそアメリカの狙い

日本が参加した場合のTPP参加国GDP構成比をみれば、アメリカと日本の2ヶ国で91%を占める。その他合計は9%でしかない。TPPが“事実上の日米貿易自由化交渉”たるゆえんだ。
ではそこで、つまり対米輸出が期待されるのか。この点について、村野瀬玲奈さんが車をたとえに要約、次のように書いている。


日本は、完成車に対する輸入関税を1978年に撤廃している。日本の乗用車輸入関税が0%であるのに対して、アメリカは2.5%、EUは10.0%、韓国は8.0%の関税を課している。
仮に完成車にかかるアメリカの関税を撤廃したとして、説明のために話を単純化しますが、アメリカは国内にある日系自動車メーカーの生産数を下げてでも、それはアメリカ国内の雇用が減ることを意味するのだが、日系自動車メーカーの日本国内の工場で作った車を輸入してくれるものか?
そもそも、TPPはオバマ政権にとって、輸出増加によるアメリカ国内の雇用を増やすためのものであるはずだ。

ありえない話ですよね。なのに、“関税を撤廃すれば”という幻想にとりつかれていて良いものか。かっての“規制緩和”、“市場自由化”幻想の傷跡も癒えないのに。

(4)関税より為替相場

米子市議の岡村ブログは、農林中金総合研究所が今年2月にまとめた報告書を紹介し、次の視点での検討も必要としている。


米国についてみると、非農産物の平均関税率は低く、日本の対米輸出に関税がそれほど大きな障害を与えているわけではない。為替相場、米国経済動向や日本企業の米国におけるビジネス展開に大きく左右されるため、TPPによって対米輸出が増えるとは一概には言えない。

(5)アジア重視ならTPPに参加するな

経済学者の五十嵐仁氏は、「中国を牽制するために日本などを囲い込もうというのが、今回のTPPの狙いの一つなのです。中国を主導力とする「アジアの成長の波」に乗ろうというのであれば、TPPに参加してはならず、それとは違った形で中国や韓国との経済・貿易面での連携を強化するべきなのです」と主張している。

境港商工会議所で懇談したときも、私たちに遠慮してのことと思うが、TPPについてはやはり口が重い。どっか、地元経済にとってもチャンスという考えがあるからだろう。“Think Global Act Local”・・・地に足をつけて検討をすべきだと思うのだが。

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