誰もが普通に暮らせるまちへ

小規模通所授産施設「まつぼっくり」
作業所施設長  

高木春未 さま


1996年から「まつぼっくり」の相談員として、障害者の社会参加に携わる。
この4月、念願の法人化を実現し、施設長の重責をになっていらっしゃいます。

04年5月27日/まつぼっくりにて

定岡 障害者の社会参加にとりくみ始められて8年目。一番、うれしかったことは?

2人の通所者が、会社に就職

高木 この4月、「まつぼっくり」から2人の障害者が就職できたことですね。障害者は多くの場合 、働けない、外に出せないと、閉じこもりがちだったのです。ミニ・デイをはじめたころ、カ レーつくろうよ、と包丁をだすと手を後ろに。危ないから親が持たせなかったんですね。一つ ひとつがそうだったんですけど、社会全体がそうだったと思うんです。それが、箸入れ作業、 タオルセット、牛乳ケース組立・・など一つひとつの小さな体験と経験の積み重ねが生きる力 になり、また市役所の清掃、福祉の店のご協力でパンの配達、フリマやバザーと、ともかく地 域へ出かけてきましたが、地域の人とのふれあいが、周りの人とかかわりあって生きる自信に つながったと思うんですね。2人の就職。初めて何万円という給料を手にしてびっくりされる んですよ。うれしかった。
定岡 まさに生きる力を育てるお仕事ですね

誰もが持っている自分らしく生きたい想い


高木 そうですけど、私たちができたのはお手伝いです。家に閉じこりがちだった仲間たちが、いま 目に見えて明るくなり、元気になってきましたが、それは専門的な訓練や指導ではなく、ちょ っとした支援があればよかった。仕事する、地域に出て人と触れ合う、仕事をやり遂げた充実 感や社会に少しでも役立っているという感情、また自分の働きでささやかでもお金が手に入る、 認め合える仲間がいるという安心感が、もともと誰でももっている自分らしく生きる自信を培 ったのではないでしょうか。まさに本人の力でした。
定岡 ご自身、障害をもつお子さんをもたれ、休む間もないこのお仕事に、最初は手弁当で。大変なご苦労が

地域から声もかけていただけるようになって

高木 大変でしたけど、「この子たちの将来はどうなるのでしょうか。境港には何もない。米子だの 鳥取だのいくのでしょうか」・・重い障害を抱えたお子さんを持つ保護者同士、話しあうなか で、できることは私たちでやりましょうと、行政の協力もいただいて、始めたことでした。最 初は、家庭訪問しても「この子は、絶対、家からはださない」・・こういう親御さんもいらっ しゃいました。仕事を確保するのも大変でした。でもいま、小学校にいってよく話もするんで すけれど、「まつぼっくりって知っている?」と聞くとしっかり手が上がるんです。地域の人 たちから声をかけていただく機会も増えてきました。
定岡 4月に法人化もなされた。この先、めざすところは?

活動の舞台がひろがりました

高木 たくさんの方のご協力をいただいて、社会福祉法人・小規模通所授産施設「まつぼっくり」 作業所となりました。いま5人のスタッフといっしょに、18人の障害者が仕事をしていま す。障害のある人が住みやすい街は、高齢者、子ども、みんなが安心して暮らせる街でしょ。 清水にも新しい作業所ができましたね。地域のニーズにあった作業所が、それぞれの地域に、 コンビニのようにできることが大切で、そういう地域の拠点として、いま県の応援も得て、 各地の小規模作業所や授産施設が共同して仕事を確保できる体制整備も準備しています。 「まつぼっくり」としても、重い障害をもつ方の医療的ケアができるデイサービスや、グル ープホームなどもぜひ、実現したいんです。
定岡 大きくなった役割だけ運営には新しい課題も

運営費補助金がカットされては

高木 「経営」ということも考えていかねばなりません。職員の身分保障も改善し、後継者もつく っていかねばなりません。いま一番の問題は、法人化で受け取れることになった運営費補助 金が5%カットされ、4月からのはずが国の方針で10月からになりそう。 半年、どうするですか。これでは、2階に上げられてはしごを外されたようなもの。先日も 厚生労働省にでかけ、明日また神戸にいって、全国の方々から新しい情報をえてきますが大 変です。市も心配してくれていますが、議会にも応援をお願いしたいですね。

インタビューを終えて・・定岡

話の尽きない1時間30分。載せきれません。「障害者に優しい街は、誰 にとっても暮らしやすい街」です。高木さんたちの活動は、21世紀のまち、ノーマライゼイ ション=だれもが普通にくらせる地域づくりでもあるのです。そして、想いをいだいたもの が主人公となって、できることからはじめる・・いま境港市がめざす「協働のまちづくり」 を、実践的に切り拓くもので、多くのみなさんに聞いていただきたい・・ こう思ったインタビューでした。
最後に「一番の理解者は?」との問いに、答えは「主人です」。この日も、車を運転できな い高木さんを積んで、入院中の通所者の見舞いに往復とのことでした。