描くことが老いも支える

六 人 目 の 登 場 は
公民館の絵画教室で教える

本池  孟 さま

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英語を教えていた高校在任中の50歳から絵筆をとりはじめ、10年後の昭和63年に、勤労者美術展労働大臣賞を受賞。退職後、公民館の絵画教室などで忙しい日々を送っていらっしゃいます。75歳。

04年10月25日/アトリエで

心のバランスを保ちたくて

定岡 英語の教師がなぜまた、絵筆を?
本池 高校で生活指導主事をしていた。ゲーム感覚で万引きが流行っていたころで、スーパーなどからしょっちゅう自宅にまで電話がかかってくる。前任者も次々、胃潰瘍で手術していた。どっかで心のバランスをとらないと教師が勤まらなかった。同僚の勧めで、絵筆をもって大山に向かったのがきっかけ。
定岡 退職なさってから公民館で教室。いま、何人ぐらいの生徒さんが?
本池 上道公民館で37名。余子で12名。境が7名かな。
定岡 はじめてみられて、いかがですか。
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上道公民館の絵画教室/04年10月27日

老若男女を問わぬ交流が楽しい

本池 絵は老若男女を問わない人との交流が持てる。英語の教師で終わっていたら、味わえなかったものだ。絵の指導っていうが、私が強調しているのは、対象をよく見ること、深く見ることだ。そうするとモチーフが「こげ描いてごせと言ってくる」と言っている。
あるご婦人が「やっとこのごろ、先生の言っていることがわかりかけてきた。私は赤が好きで、剣玉のあの輪の赤い色をずっと見ていたら、すごく描きたくなってきた」と言ってたが、そういうとき、ほんとうにうれしいね。
定岡 ものごとを深く見る眼をはぐくんでいる。それって、おだやかな心にないとできませんよね。
本池 ティータイムもとる。みんな、これが楽しい。絵は来んがお茶飲みにくるもんもいる。じげの言葉で、なんてこともない談笑がはずむ。これがエで。
定岡 なごやかなひとときが流れる・・・・心のゆとりを持ちにくい世の中に大切なことなんでしょうね。絵に自信ができれば発表の場も欲しくなるですよね。

描くことが老いも支える

本池 勤労者美術展や市展などで、たくさんの生徒が受賞してきた。やっぱり、やったという証になる。自分の自信になる。いま寿城で、81歳の生徒が個展をやっている。船に乗っていた人だが、退職して絵を始めた。10年ほど前、「先生、医者に胃がんだといわれた」と言ってきたが、手術してもこの人は、毎週、毎週、新作をもって通ってきた。実に生き生きしていて、とても胃がんを摘出したとなんか思えん。絵がいま、この人の生きがいだ。みんなで相談して、個展を準備した。
定岡 絵は老いも支える・・・。
本池 ただ、ここは意見のあるところなんだけれど、美術展が30号以上とか、50号以上とか大作を求める傾向が強い。公民館活動としては楽しんで描くことだ。無理して大きいものを描かんでも良い。公民館まつりなどを大切にしたいと思っている。
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本池孟さんの油絵 『晩秋』

良くしてくれている当局

定岡 文化活動の現場から行政へのご意見があれば・・
本池 展示室は無料開放だし、文化団体にもわずかながら補助金を出している。米子や倉吉ではやってない。境港市は良くしてくれていると思う。だから合併しない方が良いと言ったんだ。文化を大切にするこの気持ちは持ち続けて欲しい。市内にある絵画グループの合同展などやりたいが、展示室では狭すぎる。どうかしたいものだ。
定岡 そうですね。ただ、もっと文化にお金をかけるべきだと、私は思いますが・・・。最後にもう一度うかがいます。先生にとって絵とは?
本池 生きがい。これがあるから粗大ゴミにならずにすんでいる。
定岡 深い、大切なことをわかりやすくおっしゃいますね。生きがいづくりでもあるんですね。もっと広がるよう願っています。